Q この作品で川端さんは出演のみではなく脚本も書いてらっしゃいますが、どういった経緯だったのでしょうか?
A 常日頃脚本を書いていると事務所の社長(本作のプロデューサー:狩野善則)に話していました。『Bridge〜この橋の向こうに〜』(以下『Bridge』)とは別の話なんですが、3話のオムニバス形式のラブストーリーを書いて、社長に「藤真美穂さんが主役のイメージなんです」と話したら「じゃあ藤真に見せてみる」と言ってくれました。それを彼女が気に入って「やりたい」と言ってくれて…。このシナリオは、?東京?という街を軸にしたちょっと棘のある物語で、監督をはじめスタッフは私が学生時代に一緒に自主映画を作っていた時の仲間や、そのまわりの人を連れてきてやろうとしていたんですが頓挫してしまったんですね。それで落ち込んでいたら、藤真さんが「他のを書いてみたら」と言ってくれて。それで持っていったプロットが『Bridge』の原型になるお話だったんです。

Q タイトルは最初から『Bridge』?
A 『オランジュ』というタイトルでした。オレンジをモチーフにしていて、夕日の見えるところを目指すというお話でした。やはり女の子2人、男の子1人の話で、彼らの微妙な関係を描ければ、という。最初の段階ではまだプロットだったんですけど、これを加納監督に見てもらい、「一緒に作りましょう」と言っていただきました。そこから監督とふたりで話をつめて、私は『Bridge』としてのプロットに作り変えていった。シナリオの第1稿を書き上げて、映画化が本決定した時にちょうど、藤真さんとふたりでお茶を飲んでいたんですね。社長から「OKが出ました」という電話をもらった時、目の前の藤真さんは泣いて喜んでくれました。主演の市瀬さんに関しては、監督がシナリオを見てピンッときたようです。私はお会いしたことがなかったので、市瀬さんに決まってからは写真を目の前に置いて脚本を書きました。高槻さんと吉岡さんも脚本執筆の中期の段階で決まったため、彼らふたりからイメージするものを踏まえながらキャラクターを作っていきました。

Q 実際にその辺りのことが動き出したのはいつぐらいですか?
A 去年の6月ごろです。決まってからは順調でしたけど、それまでに他の企画で何回かダメになってましたから、自分の中ではようやくという気持ちが強いです。本当に嬉しかった。

Q 川端さんご自身が出演することは、当初から決まっていたのですか?
A はじめ自分の中では、脇役の予定でした。監督と話しているうちに、「ふたりの女の子のひとりをやってみない?」と言っていただいて。このことは、嬉しかったのと同時に怖くもありました。今までの自分の経験の中には、ふたつを受け持つ上での"心得"のデータみたいなものがなかったから(笑)。どのキャラクターにも自分の無意識の破片は投影されているので、まったくかけ離れた役柄ではないのですが、やはり自分とは別人格。不思議な感じでした。

Q 女性中心の話ですが、その辺はどう意識されましたか?
A 加納監督の『Rodeo Drive』を観たら、勢いのある映像や芝居がとても面白かったんです。こんな方が女性のストーリーをどう撮るんだろうって非常に楽しみでした。ひとりひとりのキャラクターに関しては、先ほどお話しした通り、この人はここに当てはめようと意識したところはあります。また雛子とひかりの関係は、私と藤真さんだったり、私と他の友達だったりします。藤真さんとは『Bridge』のおかげでより親密になれましたね。撮影中は物語の設定上、互いの距離感を保つように努力しましたが。過去に似たような題材の脚本を書いたことがあるんですが、演じる人が違って監督が違うと、こうも変わるものなんだなと実感しました。

Q もともと女優さんになりたかったのですか?それとも脚本家?
A 映画をつくりたいという気持ちが一番大きいですね。演じることもつくることの延長だと思っています。だから日々現場で学ばせてもらっています。

Q 撮影はどちらで行われたのですか?
A 千葉です。監督とシナハン(シナリオハンティング)をしに神奈川の方にも行ったんですけど、やっぱり千葉がベストでした。

Q 撮影中大変だったことはありましたか?
A 私と藤真さんは、ずっと同じ部屋に泊まっていました。もちろん監督も一緒です。あの、監督とは部屋は違いますけど(笑)。楽しかった反面、苦しいところもありましたね。
私の演じるひかりは堅物のOLという設定だったのですが、そういう経験がなかったから自分自身の役に葛藤があって悩んだり、スケージュールが非常にタイトであまり寝る時間がなかったり…。私たちは寝不足の顔にならないよう、なるべく睡眠を取るように心掛けましたが、スタッフの方々はほとんど寝ていなかったと思います。それから山の天気ですので、雨が降って撮影が中断したことは何回もありましたし、夜中の撮影は秋口なのに凍える寒さでした。でも雪山で撮影される方々のことを考えたら凍える、なんて言ってられませんね。今振り返って最もきつかったのは、トイレがなかったことでしょうか。その辺でするしかないので、助監督さんについてきてもらったりしていました。

Q 出演した皆さんの印象は?まず満作役の市瀬さんは?
A 鏡のような人だと思いました。朝どんなに早くてもかっちり顔を作ってきて、衣装とかも完璧で、「満作」としていらしてましたね。私が役づくりで悩んでると、リラックスさせてくれる人でした。そういう意味でも、私自身の役者としての鏡にしたい人です。はじめはクールな人なのかと思ったら、あったかくて、すごく面白い人でした。

Q 雛子役の藤真さんは?
A まさしく『Bridge』の生みの親のひとりである彼女は、現場で一緒にやっていてものすごいパワーを感じました。そのパワーに飲み込まれないようにするのが大変でしたね。いい意味で挑発的で、私を刺激してくれる相手だったので、すごく助けられました。私が男っぽいこともあり、いろいろとケアしてくれてほんとにありがとうっ!て感じです。奥さんにしたいです(笑)。

Q 哲平役の松田さんは?
A 加納監督と親友ということもあり、ロケハンの時にも同行してもらって。松田さん演じるうだつの上がらない営業マンは、本人の実際のキャラから抜き出した部分もあるんですよ(笑)。もちろん断片ですけど。シナリオを書く上でのヒントをくれる、スパイス的な存在。現場では、グイグイ引っ張ってくれました。

Q 珠美役の太田さんは?
A 彼女も同じ事務所だったんですが会ったことはなくて、もっと「グラビアアイドル!」って感じなのかと思ってたんですが、「こんなに性格のいい子はいない」とすっかり惚れてしまいました。それから千晶が脚本を読んで泣いたのを見た時、「書く」ことの幸せを感じました。はじめは自分演じるキャラクターが分からないと言ってましたが、撮影が進んでいくにつれて何か自信みたいなものが見えてきて。哲平と珠美の関係については、私と監督の間ですごいギャップがあって、最後まで戦いましたね(笑)。
まだ作品をご覧になってない方もいらっしゃるでしょうからあまり言えませんが、ふたりの行方が、男性と女性で解釈が真っ二つに分かれるんですよ。最終的には監督にお任せしましたが。

Q 慶太役の高槻さんは?
A 先ほどお話した、『Bridge』の前に進めていた企画の映画に出ていただく予定だったので、1度面識があり、クールな人だと思っていましたが、現場で会ったら面白い人でした。シナリオの細かいとこまで読み込んでくれて、いろいろと意見を言ってくれて。そのことが書いた私としては嬉しかったです。自分の見せ方を知ってる人で、そこを見習いたいと思いました。

Q 忠役の吉岡さんは?
A 見たまんまの方でした(笑)。やはり自分のキャラクターを分かってる人でしたね。
今回の現場で一番笑わせてもらったのが吉岡さんでした。市瀬さん、高槻さんと同じくクールなのかなと思いきや、すごく人間味が溢れてる人で。皆さんに言えることですが、会う前のイメージは、カッコよくて美しいのでどこか冷たい感じがしても、実際お会いすると面白い方ばかり。本当に楽しかったです。

Q 最後に映画の見どころは?
A 様々な愛の形を描いたつもりなので、それを感じてもらいたいです。正解なんてどこにもないし、常識的には道理に反していることだってたくさんあるわけですが、最終的に何を選び取っていくか、という選択にその人の質みたいなものが出てくる気がしています。恋愛が終わった時、記憶の中に残るのは、他人から見える外側の姿形ではなく、「いかに愛したか」という自分自身の実感。だからカッコ悪くたって、精一杯、やるだけやればいいと思うんです。もちろん「人に迷惑かけても」と言うつもりはないけれど。そのあたり、いろいろな人が出てきますから、反面教師(笑)も含めて参考になったら幸いです。
それから『Bridge』のテーマのひとつである"友達"について。"友達"という概念は実に曖昧です。曖昧だからこそ、いつでも離れたりくっついたりできる。でも自分の汚い部分や弱い部分まで見せられる人は、一体何人いるんだろう。全てひっくるめて、どうしようもないところを認め合っていける人に出会えたら、そりゃもう最高ですよね。
はじめは私のような世代、25〜30歳ぐらいを想定して書いていたんですけど、作品として出来上がってみたら、いい意味で「青い」感じに思えたんですね。それは子供から大人へと成長する間に抱く、言葉にならない苛立ちや、ごちゃごちゃした感覚だったり、そこから生まれてくる幼稚さだったり…。たとえ大人と呼ばれる年齢になっても成長しきれないところもいっぱいあるわけですが(苦笑)。その若さゆえの「青さ」を若い世代の方々にも沢山見ていただけたら嬉しいですね。
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